臨床検査では体温や血圧などを数値であらわすことができますが、客観的に痛みの強さを測って数値で表す方法はありません。
痛みの強さを測る方法があれば、歯医者さんで「痛かったら手を挙げてくださいね〜」と言う必要は無いわけです。

そこで痛みを測れたら面白いなと、こんなことを空想(妄想)してみました。
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医師「ど〜しました?」
患者「痛いんや」
医師(いや、そんなこと言われても)「どこがどれぐらい痛いですか?」
患者「スッゲー痛いねん」
医師「それじゃあ、どれぐらいの痛さを感じているか測ってみましょう。 おーい、技師さんアレ持ってきて」
技師「へーい」
患者「先生、なんでっかこれ?」
技師「痛みスコ〜プ〜」

患者「なんかドラえもんみたいやな。
それにこの技師さん、ジャン・レノみたいな顔で青い服着てるし」
技師「神経を伝わる痛みの信号を分析して、
体のどのあたりで痛みが発生しているか、
痛みがどれくらい強いかを数値化して画像で見られます」
患者「へえー」
技師「じゃあ、電極をつけますから、そこのベッドへ寝てください」
患者「はいはい」
技師「まず感度を調整しますね、よいしょ、プチツ」
患者「痛っ!なにすんねん、鼻毛なんか抜いて?」
技師「痛みの感じ方には個人差がありますからね、
鼻毛を一本抜いた時の痛みを基準にするんです」
患者「ホンマでっかぁ?」
技師「1998年に国際学会で基準を決められまして、
鼻毛を抜いた時の痛みを1ハナゲ(hanage)として、
麻酔無しで虫歯を抜いた時の痛みが500ハナゲ、
タンスの角に足の小指をぶつけた時が2〜3キロハナゲぐらいです」
患者「なんかアヤシゲやな」
技師「ポカッ」
患者「オイ、疑ごうたからて殴らんでもええやないか!」
技師「いや失礼、ちゃんと設定できたかのテストです。
ほら、このモニタ画面をみてください」
患者「なんや、これワシの体か?なんかオデコのへんが黄色になってるで?」
技師「痛みの強さを色で表してます、黄色は100ハナゲぐらいですね」
患者「点滅してるのは?」
技師「痛みが強くなったり弱くなったりズキズキしてるからですね」
医師「セットできた?どれどれ」
医師「右の下アゴがオレンジ色、300ハナゲだよ」
患者「右の奥歯に虫歯があんねん」
医師「あれぇ、体のどこにも色のついたところが無いよ?」
患者「今日はあの看護師さん、来てまへんのん?」
「あの娘を想うだけで胸がキューンと...」
医師・技師「 帰れ! 」
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用語解説
hanage
国際標準化機構(ISO)によって、人間の痛みの感じ方についての統一単位「ハナゲ」(hanage)が制定され、「長さ1センチの鼻毛を鉛直方向に1ニュートンの力で引っ張り、抜いたときに感じる痛み」が「1ハナゲ」と定義された(Wikipedia)
補足
2007年に医療機器のニプロから「Pain Vision]という機械が発売されています。
患者の腕などに電極パッドで電流を流すことで発生する痛みと、現在感じている痛みを比べてもらい、同じ痛さになった時の電流の強さを痛みの強さとして表す。というものだそうです。
医学検査学会の機器展示場でこの機械を実際に体験する機会がありました。
腕の内側に電極を貼り付けて、電流をだんだん強くしていってもらうと、ピリピリっとした痛みを感じました。感じたところでボタンを押します。この時の電流の強さが痛みの閾(しきい)値で、3回の平均を取ります。糖尿病などで末梢神経の障害が進むと、痛みの感覚が鈍くなるのでこの閾値が大きくなるのだそうです。
リウマチなどの痛みの強さを計測するときは、病気による痛みの強さが電流によって感じる痛みと同じだと感じる時点でボタンを押してもらいます。これによって痛みの強さを電流の強さで表すことができます。治療の前と後などで痛みの強さを数値で比べることができるので、治療効果の判定になるということでした。(2015/5/24追記)